世界で最も速い動物として知られているチーターが絶滅危惧種であることをご存知ですか？

アフリカと中東地域の草原に生息するチーターは、世界で約6,500頭しか残っていない絶滅危惧種です。 世界自然保護基金によって脆弱種（VU）に指定されているチーターは、野生では数か月または数年以内に深刻な絶滅の危機に瀕する可能性があるとされています。

チーターは一箇所に留まって生活するのではなく、広範囲に移動しながら生活する動物です。そのため、チーターは保護区外に生息することが多いとされています。 チーターが保護区外に移動すると、人間と出会う確率が高まります。人間は肉食動物であるチーターの出現だけで脅威を感じます。 チーターが家畜を捕食することも頻繁に起こるため、チーターを狩る人も多くいます。このように、チーターの生息地と人間の居住地の境界が曖昧になるにつれて、 チーターの生息地は減少の一途をたどっています。

幼いチーターを無分別に捕獲することも、チーターの絶滅危機を助長しています。一頭1万ドルで取引されている幼いチーターは、 密猟者の標的にされやすいのです。毎年違法に売られる幼いチーターは、なんと300頭以上と言われています。幼いチーターがいなくなれば、絶滅はさらに加速するしかありません。

専門家は、チーターの絶滅危機の原因として、生息地の減少による遺伝子ボトルネック現象を挙げています。遺伝子ボトルネック現象とは、 生息地が急激に減少することで遺伝的多様性が失われる現象を指します。遺伝的多様性が失われると、個体が病気などに弱くなるため、絶滅の危険性が高まると言われています。 そのため、動物園では、チーターの遺伝的多様性を向上させるために、動物を交換することもあります。実際、2021年には日本の動物園から韓国の動物園にチーター2頭を寄贈した事例もあります。

チーター保護基金（Cheetah Conservation Fund、CCF）では、チーター保護のために生息地の回復作業を行ったり、ボランティアプログラムを実施したり、 家畜保護犬プログラムを運営したりするなど、様々な取り組みを行っています。チーターが人間の居住地で家畜を捕食することによって発生する、チーターと人間との衝突を防ぐために実施されている家畜保護犬プログラムは、 特に効果が期待されています。また、違法に捕獲されて保護されたチーターの怪我を治療し、健康を回復させるためのリハビリセンターを運営したり、 違法取引を防ぐために環境気候変動省（MoECC）と協力したりもしています。

動物保護非営利団体ワイルドトラックは、AI分析企業SASと協力して、チーターの個体数情報を把握するための研究活動を行っています。 誰でも動物の痕跡を撮影して共有できるクラウドソーシング手法を活用した「足跡識別技術（Footprint Identification Technique、FIT）」を用いることで、 チーターに被害を与えることなく、チーターの活動をモニタリングすることができます。

これからも、このような様々なチーター保護の取り組みが続けられ、チーターが絶滅に向かって走り続けることがなくなれば幸いです。